メルヴィン的、カラデシュとからくりに関する不毛な議論(中編)
メルヴィン的、カラデシュとからくりに関する不毛な議論(中編)
からくりは何色か

memecuckerの質問:いつかからくりを完成させるという誓いには、1)「装具工」というクリーチャー・タイプがメカニズム的に不可欠のもので、2)蒸気打ちの親分と整合性のあるものになるということが必要条件として含まれているのでしょうか? たとえば、もしセットの中に「からくりを組み立てる」を入れられるとしてもその次元にゴブリンが存在しないなら、あなたはどうしますか?

マロー:1)そうだ。装具工である必要がある。
2)ゴブリンもそうだ。

2016年4月18日
※1


bassimelwakilの質問:私の記憶が正しければ、あなたは以下の理由でカラデシュを「素晴らしいセット」だと言っています。1.このセットはイニストラードを面白くする、2.この世界はプレイヤーが本当に望んでいたものの1つだ(それはスチームパンク世界だったようですね)、3.このセットは長年のデザイン的問題を解決した、4.あなたがマジックに再登場もしくは初登場させようとして長年取り組んできたメカニズムがある。これらは私が期待してきたものなので、間違っていないことを願います(とはいえ私は2つ目の項目が意味するものはエジプトかバイキングの世界だと思っていたのですが、カラデシュもとてもクールですね)。

マロー:いい要約だね。

2016年5月17日
※2


新セットに関するマローの発言が曖昧であてにならないことはよく知られているが(彼はストームスケールに関する記事でほぼ再録されないと言ったはずのマッドネスを次のセットで再録した)、からくりに関する過去の質問の中には、あえてメカニズムの重要な部分に明言したものもある。それによれば、からくりは装具工やゴブリンといったフレイバーと強く結びついており、《蒸気打ちの親分/Steamflogger Boss》が無意味になるようなデザインにはしないということらしい。

この発言をもとに考えると、現在までのカラデシュのアートにはゴブリンが登場していないことから、からくりの収録は絶望的にも思える。しかし、この次元の完全な地理は明らかになっていないため少なからず希望は残っているといえるだろう。マジック・オリジンに登場したカードやチャンドラのオリジン・ストーリーにはカラデシュの都市部に住む青や赤、そして白の人々は登場するものの、黒や緑に関してはほとんど全くわからないのだ。

ナラー一家の逃避行の過程を見る限り、この次元はミラディンのようにすべてが機械化されているわけではないようで、ギラプール市外には森や野生動物の姿も確認できる。そのため都市部にゴブリンが存在しないのだとしても、こうした未開発地域にゴブリンが潜んでいる可能性は捨てきれない。

カードデザインの面から見ても、都市の優雅な線条細工のアーティファクトと郊外の無骨で粗雑な作りのアーティファクトが対比されることは大いにありえることだ。その場合、からくりを作るのが(時計職人を思わせる)工匠ではなく(より質実剛健な印象の)装具工だというクリーチャー・タイプの不一致や、なぜからくりだけがキーワード処理で表記されるのかといういびつさも多少は説明可能になるだろう。

したがって、仮にカラデシュにからくりが登場するのなら、それは黒赤か赤緑、もしくは黒赤緑のメカニズムになると私は予想している(赤限定の小テーマになる可能性もあるが、新たなキーワード処理を必要とするメカニズムでは考えにくい)。ゴブリンは基本的に赤のクリーチャー・タイプだが、歴史的には黒単色や緑単色のゴブリンも印刷されているため大きな問題にはならないだろう。むしろ、からくりを多色化することでこの能力のカラー・パイを広げることができるというメリットを考えれば、積極的に赤以外の色にからくりを分け与えるべきかもしれない。

※1……http://markrosewater.tumblr.com/post/143035964333/does-the-vow-to-eventually-solve-contraptions
※2……http://markrosewater.tumblr.com/post/144501907188/iirc-kaladesh-got-nicknamed-the-awesome-set-by


文法的からくり

さて、からくりが登場してからの10年近い時間の中で、メルヴィンたちは様々な予想を行ってきた。法医学者がわずかな骨のかけらから持ち主の性別はおろか身長や体重まで推測するように、《蒸気打ちの親分/Steamflogger Boss》という1枚のカードから1つのカードセットのドラフトアーキタイプまで想像を巡らすというのは、考えてみればただ事ではない。

《蒸気打ちの親分/Steamflogger Boss》に書かれたヒントは、ゴブリン・装具工クリーチャーが何かを「組み立てる」ということだけだ。ちなみに「からくり」はアーティファクト・タイプであると総合ルールに明記されているため、組み立てられるのが何かしらのアーティファクトであることまでは明らかにされている。

他のキーワード処理と比べると、「からくりを組み立てる(assemble a Contraption)」というフレーズは特異な構造を持っている。「破壊する (destroy)」や「打ち消す (counter)」がわかりやすい例だが、他動詞のキーワード処理は目的語に「対象(target)」などの語や指示語を伴うことが多く、「a Contraption」のように不定冠詞を伴うことは珍しい。

加えて、不定冠詞を「two」に置き換えても意味が通じるものとなるとさらに少なく、現状それに該当するものは「捨てる(discard)」「追放する (exile)」「公開する(reveal)」「生け贄に捧げる (sacrifice)」だけなのではないかと思う。

これらのキーワードと「からくりを組み立てる」が文法的にもマジック的にも類似していると仮定すると、それは目的語を対象に取る必要がなく、なおかつ数字を伴って複数回実行できるものになる可能性が高いといえる。

もちろん、「支援(support)」のようにルール文章の中には一切書かれていないにもかかわらず対象を取る例もあることから(私にはあまりよいデザインだとは思えない)、対象を取る能力になる可能性も否定できないのだが、マローという人物の自尊心の高さから言って《蒸気打ちの親分/Steamflogger Boss》のテキストを最大限美しく反映したメカニズムになるよう手を尽くすのではないかと思われる。限られた期間の中でデザインを終わらせなければならない通常の過程とは異なって、からくりはマロー自身が自らに課した挑戦であり、デザイン的労力を惜しむことはないだろう。

(後編に続く)

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